こんにちは。
「外国人雇用のセカンドオピニオン」ふくろう主任です。
今回からは少し趣向を変えて、外国人スタッフを受け入れる現場で実際によく起きる「あるあるトラブル」を取り上げ、その背景と具体的な解決方法についてお話ししていきます。
第26回のテーマは、
「『分かりました』と言ったのに、なぜか動かない」
という、外国人スタッフを受け入れた施設で非常によく聞くお悩みです。
「はい、分かりました」
「だいじょうぶです」
そう言っていたので安心して仕事を任せたら、後で見てみると全然違うことをしていた。
あるいは、できていると思っていたら、実はほとんど理解できていなかった……。
日本人スタッフからすると、
・「分からないなら、分からないと言ってほしい」
・「分かったと言ったじゃない」
と、ついモヤモヤしてしまうかもしれません。
でも、ここで一度立ち止まって考えてみてください。
その「分かりました」は、本当に日本人が使う「分かりました」と同じ意味なのでしょうか?
外国人スタッフが仕事を適当にしているとは限りません。
今回は、「はい」「分かりました」と返事をする背景と、現場のすれ違いを減らすための具体的な確認方法についてお話しします。
1.外国人スタッフが「分かりました」と言ってしまう3つの理由
「分かりました」と返事をする外国人スタッフの頭の中では、実はこんなことが起きている場合があります。
① 知っている単語と雰囲気から「分かったつもり」になっている
私たちが慣れない外国語を聞いたときにも、似たような経験はないでしょうか。
いくつか知っている単語が聞こえて、相手の表情や状況から「たぶん、こういうことだろう」と推測して「Yes」と答えてしまう。
外国人スタッフも同じです。
一つひとつの言葉を正確に理解できていなくても、会話の流れから「おそらくこういう意味だ」と判断して、「はい」と返事をすることがあります。
特に介護現場では、
・専門用語
・略語
・独特な言い回し
・複数の指示を一度に伝える
といったことが重なるため、「返事はできたけれど、具体的な行動までは理解できていない」ということが起こりやすくなります。
② 「何が分からないのか」が、自分でも分からない
もう一つは、「質問するための日本語を知らない」というケースです。
・「もう一度言ってください」
・「もっとゆっくり話してください」
・「〇〇という意味ですか?」
という言葉を知らなければ、聞き返すこと自体が難しくなります。
さらに、説明を聞いている途中で、「最初の部分は分かった。でも途中から分からなくなった」となると、本人も「どこから分からないのか」を説明できません。その結果、「はい」と答えて会話を終わらせてしまうことがあります。
③ 「まず返事をする」ことを大切にする文化や職場経験がある
国や文化、そして本人がこれまで働いてきた職場によっては、目上の人から指示を受けたとき、「まず『はい』と返事をすることが礼儀」と考える場合があります。「質問で返すより、まず返事をする」という感覚です。
つまり、
「はい」=「すべて理解しました。問題ありません」とは限らないのです。
だからこそ、施設側が「はい=完全理解」と受け取ってしまうと、後になって大きなすれ違いが起こります。
2.実際の現場で見えた「確認すること」の大切さ
以前、初めて外国人スタッフを採用した施設のお話を伺ったことがあります。
現場の日本人スタッフからは、
「最初は言葉がなかなか通じず、理解していなくても『はい、はい』と言うことがありました。でも、理解できているか確認した方が良いと聞いていたので、しっかり確認するようにしたら、今はほとんど問題ありません」
という声がありました。
また、管理者の方からは、
「最初は日本語がほとんど話せず、分かっていなくても『うん、わかった』と言うところがありました。そのため、インドネシア語のマニュアルやOJTで準備から教えていきました」
というお話も伺いました。その結果、半年ほどで夜勤も任せられるようになった施設もあります。
もちろん、誰でも半年で夜勤を任せられるという意味ではありません。
大切なのは、「『分かりました』と言ったから任せる」のではなく、「本当に理解できているか」を確認しながら、少しずつ任せる範囲を広げていったということです。
ここに、外国人スタッフの育成を成功させる大きなヒントがあります。
3.今日からできる!「分かりました」を突破する3つの確認術
では、実際の現場ではどうすればいいのでしょうか。難しいことをする必要はありません。
① 「分かりましたか?」と聞かない
まず、これです。「分かりましたか?」という質問は、できるだけ減らしましょう。なぜなら、「はい」と答えて終わってしまうからです。
例えば、
・×「今の説明、分かりましたか?」
・○「じゃあ、次に何をするか教えてもらえる?」
・○「一番最初にやることは何かな?」
と聞いてみる。さらに、「じゃあ、一回やってみてもらおうか」と実際に動いてもらう。
「理解したか」を聞くのではなく、「理解した内容を説明してもらう・やってもらう」。これだけで、理解度がかなり見えやすくなります。
② 「分かってないでしょ?」ではなく、「一緒に確認しよう」
理解度を確認するとき、言い方も非常に大切です。
・×「ちゃんと分かった?」
・×「さっき説明したよね?」
と言われると、相手は「怒られる」と感じ、ますます質問しにくくなります。
そんなときは、
「念のため、手順をもう一度やってみてもらえる? 私の説明が分かりにくかったかもしれないから」
と伝えてみてください。
「あなたが分かっていない」ではなく、「一緒に確認しよう」というスタンスです。この小さな違いが、質問しやすい空気を作ります。
③ 「分からないときの言葉」を先に教えておく
実はこれも非常に有効です。「分からなかったら質問してね」だけでは、外国人スタッフは困ってしまうことがあります。
そこで、具体的な言葉を教えておきます。
・「もう一度、ゆっくりお願いします」
・「〇〇という意味ですか?」
・「ここが分かりません」
・「もう一度やってみてもいいですか?」
こうした言葉を、「困ったときのお守り」として最初に教えておく。
すると、「分からないけれど、何と言えばいいか分からない」という状態から抜け出しやすくなります。
4.介護現場なら、こんな確認をしてみよう
例えば、
「利用者様の食事が終わったら、口腔ケアをして、その後トイレ介助をお願いします」
と伝えたとします。
ここで、「分かりましたか?」と聞くのではなく、
・「食事が終わったら、まず何をしますか?」 と聞いてみる。
・「口腔ケアです」と答えたら、「そうそう。その次は?」 と続ける。
・必要であれば、「じゃあ、一度やってみましょう」 と実際の動作まで確認する。
この方法なら、相手を責めることなく、理解度を確認できます。
そして、理解できていなかったとしても、「分かってないじゃない!」ではなく、「ここはもう一回一緒にやろう」と、その場で修正できます。
まとめ:「分かった?」を責めるより、確認の仕組みをつくる
外国人スタッフの「はい」「分かりました」という返事を聞いたとき、「ちゃんと理解したんだな」と判断するのではなく、「じゃあ、一度確認してみよう」という習慣を現場につくってみてください。
外国人スタッフが「分かりました」と言ってしまう背景には、
・本当に分かったと思っている
・何が分からないのか整理できない
・聞き返す言葉を知らない
・まず返事をすることを大切にしている
など、さまざまな理由があります。
だからこそ、「分からないなら、分からないと言って」と本人に求めるだけではなく、「分からないと言いやすい」「理解できたか確認できる」仕組みを、受け入れる側もつくっていく。これが、外国人スタッフとのすれ違いを減らす近道です。
そして、この方法は外国人スタッフだけに有効なのではありません。新人の日本人スタッフにも、ベテランの新しい業務習得にも使えます。
「分かった?」ではなく、「じゃあ、どうする?」
この一言から、明日の現場を少し変えてみませんか?
・「何度言っても『分かりました』と言うのに、ミスが減らない」
・「日本人スタッフと外国人スタッフの間で、指示の伝達がうまくいっていない」
・「教える側も、何度も同じことを確認することに疲れている」
そんなときは、ぜひ一度「ふくろう主任」にご相談ください。
外国人スタッフだけを変えようとするのではなく、「どう伝え、どう確認し、どう育てるか」という現場の仕組みから、一緒に見直していきましょう。
